2018年07月08日号 02面

 戦後、韓国木浦の「共生園」で孤児の養育にあたり「韓国孤児の母」と呼ばれた田内千鶴子。その意思を受け継ぎ、国連「世界孤児の日」制定運動を進めている田内千鶴子生誕100周年記念事業会(阿部志郎会長)が6月27日、「国連『世界孤児の日』制定請願ニューヨーク世界大会発足式」を東京墨田区の玉の肌石鹸(株)本社で行った。韓国からの賛同者も含め50人を超える参加者が集った。
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この運動は、田内千鶴子の長男で社会福祉法人こころの家族理事長の田内基氏が2002年に提唱、「孤児を含む代替的な保護が必要な児童に対する問題意識を世界的に拡散させる」ことを目的としている。14年には委員会が発足、15年には3万5千筆の署名を集め、その他講演会開催、学術セミナー開催と広がりを見せ、今年10月15日に「ニューヨーク世界大会」を開催するにあたり、今回の発足式となった。DSC02727
発起人代表の阿部氏は「孤児には居場所が無い。神が愛する子どもたちに居場所を作り、孤児がいないような社会を作る事は、世界の大人の責任」と挨拶、会場となった玉の肌石鹸会長の三木晴雄氏は「24年前に、田内千鶴子の生涯を描いた映画『愛の黙示録』製作のための集まりもここで行い、想定外の献金が与えられた。この働きを成功させるためにご協力いただきたい」と歓迎の言葉を述べた。
日本からは石破茂(衆議院議員)、原田憲治(衆議院議員)、西守潮三(日韓友親議員連盟高知県名誉会長)、韓国からは金泳鎭(韓日基督教議員連盟会長)、慎承男(共生福祉財団理事長)、崔相龍(元駐日大使)、の各氏が来賓として祝辞を述べた。石破氏は「日韓の間には解決しなければならない問題があるが、安全保障、高齢化など同様の課題には力を合わせたい。孤児の日制定も、政治の場にいる我々もこの趣旨をよく理解し、外交の一つの柱として韓国とともに努力をしたい」、金氏は「孤児の日制定に向け、田内千鶴子の子息が私たちの心を動かし、国連を動かそうとしている。かつて土肥隆一氏と、政治的な問題をキリストの愛を持って解決したい、と話したことを思い出す。韓国と日本の間にある厚い壁をキリストの愛をもって解決したい」、と語った。
提唱者の田内氏は「ニューヨーク世界大会」へのビジョンを次のように語った。「50年前、木浦市民3万人が集まって母千鶴子の市民葬をしてくれた時、『あなたの母の願いであった孤児を愛する日を世界に作るんだよ』と木浦市民から言われ、木浦市長に提案した。父の尹致浩は孤児の面倒を見ている時に、子どもたちに笑顔を取り戻すためと言って音楽の教師を求め、母千鶴子がそのボランティアをした。父が、笑顔でなく『米』を求めていたならば米で終わっていただろう。その父の感性と母の精神で国連に働きかけたい。足らない私を、みなさんが子どものたちの幸せのために集まって、支えて下さっていることを感謝している。これからもご協力をお願いしたい」
最後に、高齢社会をよくする女性の会理事長の樋口恵子氏が決議文「夢いっぱいの日に」を朗読し、決意表明を行った。